血の契約

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街灯に舞う羽虫、辺り一面は薄暗く、星空が輝く夜空が天を覆っていた。 その一画、一軒家の二階からは賑やかな声が漏れていた。窓越しから煌々と灯りが漏れている。 カーテンは水色、ウッドデスクの上には可愛らしい小物、二枚扉のクローゼットにはバンドグループのポスター、絨毯とベッドのシーツは桃色。 「華ちゃーん!」 ガバッとベッドの上で萌が華を押し倒した瞬間。華は黒と白のダボダボのボーダーシャツにコーディロイのホットパンツ姿。萌は水色のTシャツに、ジャージ姿であった。 萌は、華の首筋をしきりにキスしていた。 「ちょ、止めてよ萌っ!」 「血ぃ吸わせてーな!血をちょっぴり吸わせてーなー」 「もう、いい加減にしてよ!」 華は萌を突き放すと壁際に移動して、身構える。萌は、懲りない様子で華な飛び掛かりそうな体制。 「華ちゃーん、ワシが可愛がってやるけんのー」 「ちょ、キャラも崩壊してるし、なんなの?萌、ちゃんと話し聞いて!!」 「へへへ、それは、お楽しみの後だ~い」 萌が飛び掛かかった瞬間、華は体を翻した。ドサっと萌はベッドに顔を埋める。 「うう、お主、なかなかやりおるな」 「ねえ、萌、ちゃんと話聞いてくれる約束でしょ?!」 萌は観念したかの様に、肩を落とす。それを見てようやく華も安心して萌の横に腰を下ろした。 「鴻巣君の事、信じて貰えないのは分かるけど、萌には全部ちゃんと聞いて欲しいの」 「華、実はさ。私、ミスターパーフェクトの事、華の話し聞いて胸が痛んだんだよね。」 「え?」 「華に、言いづらくてさ。ゴメンね。私もさ、鴻巣君の事、好きになってたんだ。」 「え、ええ!」 驚く華、申し訳無さそうな表情の萌。しかし、華の話そうとしている事は全く荒唐無稽な話し。 華が、話しを切り出せないでいると萌が口を開いた。 「鴻巣君が、吸血鬼だったら華は諦めるの?」 唐突な質問、萌はあの光景を目の当たりにしていないから言えるのだと華は確信していたが、こういった感情論に対抗する術が無い。 「萌、私は、百年の恋も冷めた気分。まあ、ずっと憧れていたけど、どっかで諦めていたのも事実。それに萌も、きっとあの瞬間を目の当たりにしていれば、きっと!」 「そうかもしれない、でも、そうじゃないかもしれない」 「萌」 萌の感情は、華のそれを大きく上回っていた。それは、華への遠慮から次第に肥大していったものであった。
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