再始動の予感

2/6
前へ
/101ページ
次へ
「おはようらすと」 「おはよ」  十月。  衣替えを終え、紺のセーラー服を身に纏う有紗が俺の前にいる。  早朝。  もう、受験勉強以外することの無い俺達は、登校時間よりも少し早く学校に向かい、二人で一緒に勉強することを日課にしていた。 「手握らなくて平気かい?」 「うん。でも、握ってようよ」 「そうだね」  俺は有紗の左手を握った。  少しだけ冷えた有紗の左手。  ずっと一人では歩けなかった有紗のこの手を、俺は何年も握り続けた。  ずっとずっと、自分の気持ちにも気付かず。  ただ、きっと有紗のためになると思って。  そして、何かが変わるかもと思って。  三ヶ月前のブルーウィークの最終日、俺は有紗に告白した。  あの時から全てが変わった。  ブルーウィークの間、徐々に変わっていた俺の気持ちが、あの瞬間に意識を持ち、明確な意味を持って、確実に、間違いなく変わった。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加