完璧な彼女と、僕

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「ほら、私の美しさってさ、完璧だから」 部屋で、缶チューハイを片手に、 彼女がそういうのを聞いていた。 (自分で言っちゃうんだ) そう思ったが、彼女は確かにまぁ、 美しかった。 彼女の美しさを言葉にするには難しい。 人によって美醜は変わってくるし、 そもそもが美しさを表現するのは困難なのだから。 だから代わりに、事実を述べよう。 彼女の美しさは、男性のみならず、 女性でさえ虜にしてしまうほどだった。 僕は安酒を片手に、彼女と話をしていた。 「そんなことより、この問題は?」 彼女が急かすようにそういう。 僕はペンを走らせながら、彼女と夜を過ごす。 あんまり長くやりすぎて、 寝不足になることもあったけど、 大学生の僕には、 そんなことは瑣末(トリビアル)なことだった。 僕は彼女のことが好きだった。 寝ている時間よりも、 彼女と一緒にいる時間の方が長かったし、 寝るときでさえ、彼女を思いながら眠った。 ただ一応、彼女は完璧といえど、欠点もあった。 彼女の美しさは多くの人を魅了した。 そして多分、 同じくらいの人から激しく嫌われた。 妹は「苦手」と言ったし、 僕の友人は彼女を「生理的に無理」と評した。 彼女の完璧さは、万人に受けるものではなかった。 でも僕にとっては、そんなことは瑣末だった。 ある時僕は、 別の欠点を、 最大級の欠点を知ってしまった。
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