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「彼女は不完全であり、
故に完璧ではない」
誰かが、そう言った。
いつ聞いたのかは思い出せない。
すれ違ったカップルが、
そんな話題で盛り上がっていたのかもしれない。
彼女に振り向いてもらえない誰かが、
彼女を揶揄するためにそういったのかもしれない。
いずれにせよ、
それがあまりにも抽象的すぎて、
「完璧ではない」ことだけしかわからないが。
もし本当であれば、
僕とっては由々しき事態だ。
その夜も僕はやはり、安酒片手に、ペンを走らせていた。
「君は完璧ではないの?」
できるだけ自然に、彼女に聞く。
彼女は、何度もそう問われていたのだろう、
「ああ、それね」と言った顔で、聞き返してきた。
「そう見える?」
「いや、全く」
「そう。ならば、完璧なのよ。きっと」
腑に落ちないを顔をすると。
「問題は貴方よ。私じゃない。
貴方がそう思えば、そうなのよ」
もしかすると、はぐらかされたのかもしれない。
だが僕は、確かにそうなのかもしれない。と思った。
それ以上、その話はしないことにした。
実際、僕は彼女が完璧だと思うし魅力的だとも思う。
だからこそ、こうして付き合っているのだから。
でもそれからは、
僕も知らず知らずのうちに、
彼女の付き合い方が、変わっていってしまった。
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