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「だって、昔からお前、女との別れ話だろうが、仕事だろうが、
謝って断らなきゃならない時は、必ず自分から出向いてただろう?」
「そう、だったかなぁ……」
つまんなそうな口調をしつつ、忍は、手の中のおしぼりで
さり気なく手汗を拭う。
そして「そうだよ」と暢気に言う友人の顔を眺めて、胸の内で呟いた。
そうだ、彼は、昔から無意識の観察眼が妙に鋭かったっけ。
しかし、そんな彼の呟きなど知らぬ友人は、
「だからさ、今度も、お前からこっちに来るって言われて、
ああダメだったかって、俺は腹を括ってた」
穏やかな笑顔を見せて、注文に店員を呼ぶ。
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