第1章  忍(続き)

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「だって、昔からお前、女との別れ話だろうが、仕事だろうが、 謝って断らなきゃならない時は、必ず自分から出向いてただろう?」 「そう、だったかなぁ……」 つまんなそうな口調をしつつ、忍は、手の中のおしぼりで さり気なく手汗を拭う。 そして「そうだよ」と暢気に言う友人の顔を眺めて、胸の内で呟いた。 そうだ、彼は、昔から無意識の観察眼が妙に鋭かったっけ。 しかし、そんな彼の呟きなど知らぬ友人は、 「だからさ、今度も、お前からこっちに来るって言われて、 ああダメだったかって、俺は腹を括ってた」 穏やかな笑顔を見せて、注文に店員を呼ぶ。
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