第1章  忍(続き)

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「うん。やっぱり、なんか断りきれなくてね」 忍は、苦笑を隠して細く溜息をついてみせた。 「でも、スケジュール的に大丈夫なんですか?」 「ウチには優秀なスタッフが揃ってるから、なんとかなるだろう」 しかし、誤魔化すために売った らしくもない媚びは、(ウソブ)きか皮肉に取られてしまう。 「怖っ。朝比奈さんがそういう冗談言うなんて、なんか嵐でも来そう」 いつもは、冷たいほどに仕事に関してはシビアな忍に、 アシスタントデザイナーの坂下が訝しげに言う。 そして、もう一人のアシスタントデザイナーの矢吹も空かさず同調した。 「もしかして、その友達の人に何か弱みでも握られてるんじゃないですか」 ちょっとからかうように、ニヤリと笑う。
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