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第1章 忍(続き)
「なんだ、お前。子供が生まれたばかりだろうが」
わざと少し冷めた口調で、カマをかける。
その裏で、心臓はうるさいほどに激しく忍の胸を打ち続ける。
そして、「ええ……?」とキョトンとする友人に、
忍は、するりと視線を背後に流した。
だがもちろん、この男が浮気などするタイプでないことは百も承知。
そして案の定、「あぁ」と苦笑した友人は、「部下だよ」とあっさり言った。
「この春からさ、俺の下で働いてくれてる。
俺達と畑は違うが、なかなか面白い感覚のある子でね」
ふぅーん。
口では気のない相槌を返すが、
視線は、既に姿の消えた彼女を追わずにはいられない。
しかし、そんな彼の様子を、友人は然して不思議には思わなかったらしい。
「まぁ、とにかく行こう」
彼は、忍を促し地下道を歩きだした。
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