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『もしもし!聞こえてますか!警察に知らせたらと脅させて頂いたんで、多分ないとは思いますが、このままお話を続けていて、もしも側に……ですから蕎麦じゃありませんってば!お隣に……
ええ、お泊まりはしてるんですよ。昨晩、私の家に……し、失礼なことを言わないでください!!私はそんなふしだらな男ではありません!一切乱暴なことはしていません!』
祖母が何を聞いたのかは容易に想像できる。確かに律儀な人だ。ふしだらなのはむしろ私の方で…
でも悲しいことにそれが、祖母には決して正確には伝わらない。
『ランボーって、それ大昔の映画でしょう!とにかく警察がいて逆探されでもしたら……だから虐待なんかしてませんよ!』
もはや彼は涙目になっている。
『逆探知機のことです!……どう聞けば塩タン焼きになるんでしょうか…』
それを私に聞かれても……
とまあ、こんな調子で延々と一時間近くをかけ、
ようやく彼の真意を祖母に伝えることができた。そして私に、
『いやあ、ホッとしました』
本当に爽やかな笑顔をみせてくれた。
そしてその夜…
私は無事に解放された。
彼は見事と言うか、至極当然と言うべきなのか。案の定、逆探知機につかまり、あっさりと逮捕されてしまった。
両親の作戦にまんまと引っ掛かった彼は、
ほんっ・とうっー!…に、
残念すぎる人だった。
最大の欠点は『お人好し』だったのかも知れないと、このとき気がついた。
さらに天は二物を与えないと云うことも。
≪完≫
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