はじまり

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「はぁ…あほくさ」 銀は延々と続く廊下を歩きながらそう呟いた。 周りにちらほらいる者たちとは付かず離れずで、一定の距離を保ったまま順路に従って歩き続ける。 ____早い話、銀頂高校は「実験校」だ。 それは、 "被検体を減らさないために"入試が一切無く、 "実験情報の漏洩を無くすために"完全寮制であることから容易に推測できる。 そして、銀頂高校は新しい教育を取り入れたと謳っているのに、 そのカリキュラムはおろか、在校生・卒業生の数さえ明らかにしていない。 政府の息がかかっている分マスコミも手が出しづらいらしく、銀頂高校の実態を知る者はほとんどいないと言われている。 よって、 たとえ中で虐待が行われようと、 兵士の訓練や兵器の開発がされていようと、 文字通り"実験"の"被検体"になっても、 一度入学してしまえば文句は言えない。 まぁ国が未来ある高校生にそんなことするとは思えないが、情報を隠すからには何か裏があるのは明らかだった。 恐らく、「夢が叶う」などといった大それたキャッチコピーは、 こういったことをうだうだ考えさせる前に、 ファーストインパクトで入学の意志を固めさせるための戦略なのだろう。
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