歪な邂逅

4/40
前へ
/40ページ
次へ
 その女生徒は、ただ笑っていた。  こちらを見て。  好意的としか、捉えようのない形で。  赤い、瞳で。 「疑問とか、ないの?」 「ない」  軽い調子の質問を一蹴し、オレは右手を伸ばし――伸ばした人差し指と薬指の先端を、女生徒の両眼に、"突き入れた"。  ぐち、という柔らかくしかし奥は結構硬いものを"押し潰す"ような、厭な感触。  女子生徒は悲鳴をすら、あげなかった。  立て続けに両足を凪ぎ払うようなローキックを、叩きこむ。  女生徒は両足を薙ぎ払われて、半回転してから頭からゴン、と物凄い音を立ててアスファルトの上に衝突していた。  そこに上からカカトを、喉に、突き刺す。  肉が肉を、押し潰すような感覚。  しかも女性特有の、柔らかく、滑らかな肌の。  それを自分の武骨な踵が、押し、潰した。  その事実は、胃袋をひっくり返ったような不気味な感覚を引き起こした。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加