第1章

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幸せ・・・横顔にそう現れて涙が出そうになるのをグッと堪える。 真っ白なウエディングドレス。 スレンダーな体に良く似合っている。 横顔から後姿へと変わる。 一歩一歩遠ざかる。 二度と彼女は手に入らない。 昔の映画みたいに彼女を連れ去って行きたい。 ああ、でも彼女はそんな事望んでいないだろうな。 この日を誰よりも待ち望んでいたんだから。 気を抜くと涙が零れ落ちそうになり、グッと奥歯を噛みしめる。 誓いの言葉 誓いのキス 目も耳も塞いでしまいたい。 何も見たくない。 何も聞きたくない。 ずっと一緒に居ると思っていた。 ずっと二人で居られると思っていた。 それなのに彼女が選んだのは・・・・ 式の間中、新郎を睨みつける。 こんな事したって無駄な事は分かってるが、気持ちのやり場がない。 みんなの囁く『綺麗だね』の言葉に当たり前だと言いたくなる。 彼女は誰よりも美しい。 それなのに、あんなつまらない男に捕まって。 どう見たって不釣り合いだ。美女と野獣だ。 思いとどまって。 これからも二人で楽しくやっていこうよ。 彼女から結婚の話を切り出された日、この世の終わりを迎えた気分だった。 教会の鐘が鳴る。 彼女にとっては門での鐘だろうが・・・ 死期を知らせる鐘の音のように聞こえる。 「瑞希ぃ、晴子が結婚するから寂しいんでしょ。 あ、そっかこのあと友人スピーチやるから緊張してるんだ」 隣の愛奈が小声で私をからかう。 そんなんじゃない! 「あんな奴!晴子が幸せになるはずない!私の方が幸せに出来るのに!」 「でたよ、瑞希の晴子好き。いい加減諦めな」 鐘の音が鳴る。 彼女への思いを葬り去るレクイエムのように・・・
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