歪な邂逅 その2

3/40
前へ
/40ページ
次へ
 歩みは止まらず、さらに一歩。  こちらの間合いになる。  だが俺は動けない。  さらに質問を、投げかける。 「今までもこうやって、試してきたのか? 罪もない人々を」 「え? うん、試したよ。弱いひとはお呼びじゃないからね」 「お呼びじゃないのはてめぇだ、外道が」  え、とその口が音を発する前に、俺は先手をしかけていた。  地を這い、獲物の胴体を串刺しにするような――前蹴り。 「きゃ……あ、ァ……!」 「息ができないだろう、化け物が」  吸血鬼はつま先が深々と突き刺さった鳩尾を抱えて、蹲る。  それを俺は、無表情に見下ろす。  もはやこんな生き物にかけてやる情など、一ミリもない。  よくよく考えれば最初からこいつは、躊躇いが無かった。  考えてみるべきだった。  俺たちだから、大事にならずに済んだ。  じゃあ俺たちじゃ、なかったら?
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加