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沈黙が訪れる。
それは当然だった。
いまこの場には俺と、この吸血鬼しかいない。
吸血鬼が喋らなければ、俺が黙ることで沈黙の完成だ。
それはいい。
「……どゆこと?」
「てゆー、か……むしろボクが、どーゆーこと?」
再び沈黙。
とりあえず掴んでいる髪は離しておくことにした。
気分、なんか悪いし。
ていうかキャラ的に、こういういことするタイプでもないし。
というかしたくないし。
髪を離すと、女は再び腹を押さえた。
痛みに堪えるように、冷や汗が頬を伝う。
これもまたおかしい。
昼間と全然違うじゃないか。
気持ちが、ぐらぐら揺れる。
平常心を保てない。
修行が足りないことを実感する。
それがまさか精神にも及ぶだらんて。
いかん、心中の呂律すら怪しくなってきた。
とりあえず、色々と確認しておく。
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