第1章

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「ふぅー、いつ聞いても納得できん。何故すぐ分かる?本当はお前が犯人じゃないのか?」 「やめてくださいよ、そんな訳ないじゃないですか。今日、ここに初めて来たんですから。僕はただ、僕ならそうする、と考えただけですよ」 僕ならそうする。それが、陣内准教授の推理法だ。 完璧主義者な犯罪心理学者。犯罪者の心理を理解して、更にその奥地に踏み込む。 自らを、犯人へと置き換える。そして、自分ならそうする、という犯行手順を口にする。 外れたことはない。けれど暴走すると、一人で犯人の手口に悦に浸るので、たまったものじゃない。 だから俺が、ストッパーとしてその暴走を止める必要があるのだ。 数日後、この事件の犯人が逮捕された、と兄から聞いた。 それを陣内准教授に伝えたところ、返ってきた返事は予想通り、「ふーん」だった。 犯人の心理や手口に興味があるだけで、動機や逮捕されたことに関してはまったく関心を示さない。 90点越えの犯人の手口を、俺が無理して聞き出して逮捕となったときは、「あーぁ、捕まっちゃったかぁ」と本気で残念がっていた。 ほんと、この人には呆れる他ない。 だからこれからも俺が、時にストッパーとして食い止め、時に無理して聞き出して、事件解決に導いていくしかないようだ。
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