第1章

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「まず、犯人の侵入経路だが、玄関の扉に細工したような跡や窓も割られていないから普通に、堂々と玄関から入った。宅配便にでも装って。で、玄関を開けた母親をナイフで脅し、家の中に。リビングで寛いでいた父親と共にガムテープで拘束する。ガムテープを用意していることから、秩序型の犯人であることは明白」 「秩序型?」 「簡単に言うと、計画をしっかり立てる犯人のこと」 兄が小声で訊いてきたので、俺も小声で答えてやった。 秩序型の他に、無秩序型というのも存在する。こちらは、現場が滅茶苦茶で証拠が多数残っていたり、常軌を逸している犯人を指す。 秩序型か無秩序型かは、犯行現場を見れば一目で分かる。 「その物音を不審に思った娘が二階から降りてきてしまって、同じく拘束される。一家全員リビングで拘束状態。勿論、口にもガムテープを貼っているので悲鳴を上げることもできない。それから犯人はまず、父親を刺す。致命傷にならない程度に浅く、何度も何度も。いたぶってから殺す。母親も同様に殺害し、娘は一突き。必死に抵抗し逃げようとしたためだ。以上のことから、この一家に相当な恨みを持つ者の犯行であることは明らかだ」 「逃走経路は?」 「宅配便を装っているのだから、車だろ」 「他は?」 「他?うーん……ない、かな。来た道を普通に引き返すだけだ。自宅への道を。そしてそのまま、今も、何食わぬ顔して普通に過ごす。この家に証拠を残してないから、余計な心配をしなくて済むし」 それも、秩序型の犯人の特徴だ。現場に証拠を残さない。そして、もう一つ。 秩序型の犯人は、警察を欺こうとする工夫がしている。そうなると、警察の捜査が難航する可能性が高い。 だから警察は、陣内准教授を頼ったのだろう。けれどもう少しで、更に難航を極めることになっていたかも知れないと思うと、恐ろしい。
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