影法師

12/204
前へ
/204ページ
次へ
「どうすりゃいいかな・・・」 来たばかりのこの町では情報屋もまだ作っていない 捜査の終わった事件をほじくり返すように他の刑事に聞くわけ にも行かない それにすでに監視されている可能性もある 「捜査の基本はやっぱ現場からだな・・」 場所は三宅から聞いている、捜査にまだ加わっていないので 定時で帰れるので定時で帰り動いてみることにした 現在の捜査中の事件の内容を把握するなど夕方まで普通に仕事をした 鹿島もまだ戻ってなく刑事課の刑事部屋には一人、二人しか姿はなかった 「すいません 今日はお先に失礼しますね」 「おつかれさ~ん」 部屋にいた刑事があくびをしながら答えた 署の裏口から駐車場に向かって歩いていたら 自分を呼ぶ声がした 振り向くと鑑識の三宅が小走りで追ってきていた 「あんたが帰るのが見えてよ」 追いついた三宅が笑って言う 「ミイラの発見現場行くつもりだろ タバコ一箱で案内してやるよ」 「分かった お願いするよ」 三宅は助手席に乗り込んで言った 「葵橋ってナビにセットしな」 言うとおりにセットして車を走らせる 「嗅ぎまわる俺と一緒にいたら三宅さん あんたにも迷惑が  かかるんじゃないのか?」 聞いた 「なあに、おれはあんたに聞かれたから答えてるだけで事件を  追ってるわけじゃない 大丈夫だよ」 「建前はな」 「建前?」 「問われりゃそう答えるってことだ、本当はちょっとムカつい  てんだよ」 「だれに?」 「科捜研だよ 人の案件横取りするみたいにブツ持っていって  結果も教えねーからよ 所轄の鑑識を見下してるからなあいつら」 「ミイラがどこの誰だか知らねーが 3ヶ月前に生きていた奴が  なぜ短時間でミイラ化したのか知りたいんだよ・・好奇心だな」 鑑識畑の人間らしいと苦笑する神山 「見えてきたぜ・・あそこだ、橋の手前を右に入って止めてくれ  下に降りられる小道がある」 車を降りて橋の下へと続く小道を歩いて橋の下まで歩く 「前はチラホラとホームレスのダンボール小屋があったが  事件以来、寄りつかねーみたいだな」 まわりを見渡し三宅が言う 「ほれ そこだ」 三宅の指差す先に消えかかった人型の白線があった
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!

206人が本棚に入れています
本棚に追加