影法師

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深夜、市役所の駐車場のチェーンを外し車が一台入って来た 正面玄関の前に止まりドアが開く 「めっきり寒くなってきましたね」 シルバーとブルーでパトカーを模したデザインの警備会社の 車から二人の警備員が降りた 定時の見回りだ 「やっぱ夜中は冷えるよな」 警備会社の名前の入ったジャンパーを羽織りながら言った 「じゃあ南館回ってくるからお前は北館行って来てくれ」 「分かりました行って来ます」 若い方の警備員は北館の通用門へ向かった 「ご苦労様です」 守衛室件深夜窓口に顔をのぞかせて声をかける 守衛は常時いるのだが窓口の対応が主で館内の見回りなどは 警備会社に任せているのだ 窓口の中から老人と言っても良さそうな守衛が顔を覗かせた 「ご苦労様です 今開けます」 通用門の鍵を内側から開けてもらい中に入る 「じゃあ自分廻ってきますんで」 各フロアに設置されたセンサーを切ってもらい 館内への廊下を歩いて行く 金目の物はなくても今や個人情報は宝の山と同じである 市役所は個人情報の銀行のようなものだ・・・ 銀行ほどセキュリテイは固くはないが・・・ 北館は1階に市民課や資産税課、2階には土木科など環境や 事業関係、3階は3つの会議室、4階は市議会室となっている 階段で4階まで上がり、マグライトで周りを照らしながら 各フロアを降りながら順番に回っていく 静まり返った館内 広いだけに自分の靴音が響く 1階への階段を降りかけた時に時にイヤフォンから トランシーバーの声がした 〈終わったか?〉 「一階フロアに降りるところです」 〈コーヒー、温かいのと冷たいのどっちがいい?〉 「サンキューです 温かい方で」 〈了解、先に車で待ってるぞ〉 「了解しました」 一階に降り、フロアをライトで照らそうかと足元に向けていた ライトを上げかけてすぐに消し壁に体を寄せた 人影が見えた気がしたのだ そっと見てみる・・・ 市民課のデスクのパソコンのモニターがついている キーボードをうつ後ろ姿が見えた 「主任、1階に人がいます」 マイクを口に近づけ小声でトランシーバーで言う 〈守衛じゃないのか?〉 「いえ 市民課のパソコンいじってます 後ろ姿ですが  守衛の帽子も被ってません 明らかに侵入者だと思います」 〈その場で見張ってろ 俺が行くまで動くなよ〉 「了解しました 急いで来てください」
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