影法師

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照明が落とされた暗い廊下を走る、つきあたりまで走ると廊下は右に折れている 左側には上の階への階段だ 右を見ると明かりの差し込むすりガラスのはまった 片開きの自動ドアが見える  すりガラス越しに差し込む明かりが照明の消えた暗い廊下を照らしている 「出入り口よ!多分あそこから外へ出られるわ!」 息を切らす愛美とみちるを励ますように圭が言う 頷くみちると愛美 走り出す、後に続いて走る愛美、みちる 廊下を半分ほど走ったところで圭が急に足を止める 「きゃっ!」一番うしろを走っていた愛美が止まったことに気づくのが遅れて前にいるみちるにぶつかりそうになりながらつまづいて転んだ 何事かと顔をあげて前を見る愛美、圭もみちるも立ち止まったまま何も言わない 前に何かあるのかと横から覗く 圭が無言で小銃を構えている 後ずさりながら片手で後ろにいるはずの愛美に手をのばすみちる ここにいると言うようにその手を掴む愛美、みちるが掴んだその手で愛美を引き起こす 立ち上がりながら首を伸ばして圭のその先を見た ドアを背にしてこちらに向いて立っている男が見えた、道を塞ぐように立ち こちらを見てるようだ、光を背にしているので顔がよく見えない 自分たちを待ち構えてたかのような空気を感じる 「私は警察官だ!誰だお前は!この地域は立ち入り禁止区域だぞ!なぜこんなところにいる!」 男は何も答えなかった 「何も言わないのが答えか」男を睨みつける圭 避難を無視してビル内に留まった者ではないと確信した圭はトリガーに指をかけた 「おかしな動きをしたら撃つ!ゆっくりとドアまで後ろへ下がれ!」   「下がって」 小さな声で愛美たちに言う そっと一歩づつ後ろに下がる二人 男が一歩前に踏み出した 「動くな!!」 言って銃口を天井に向けてトリガーを引いた 狭い廊下の中に銃声が響く 「舐めるなよ、次は当てるからな!」男に銃口を向け直す 狭い廊下での小銃の轟音のような発射音に愛美もみちるも耳が鳴っている 圭が小声でなにか言ったようだが聞き取れなかった
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