影法師

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「近いな、こちら側へ後退したのか?」 「いえ、路地裏は通れないはずですし様子が変です、聞こえたのは2発だけです」 「小銃の音だろ」 「はい、ハチキュウの音に間違いありません」 彼らは圭が小銃を持っていることを知らない、横で聞いていた神山の顔色が変わる 二発の銃声、、、敵が現れて威嚇射撃をした絵が頭をよぎる 「俺は戻る!お前らは表の通りへ向かってくれ!」走り出す神山 「おい!待て!」後ろから止める声がしたが構わず走った 「ちっ!お前はこのまま進め!おれはあいつと一緒に行く!部隊と合流して女達3人を探せ!」 「ですが!」 「いいから行け!命令だ!」それだけ言うと神山の背を追って走り出した 「くそ!」一瞬迷ったが命令に従い神山たちと反対方向へ走り出す 走りながらも周りを伺い圭たちの位置をなんとか見つけようとする (どこだ!どこにいる!)焦る神山 相手は人ではない、圭といえども二人を守りきるのは難しいだろう   先程の路地まであとビル一つ分のところまで戻ってきた 頭上で小銃の連射音 慌てて足を止めて上を見上げようとした 「上を見るな!!」 怒鳴り声とともに襟首を掴まれて引き倒された 仰向けに倒れた神山の上半身に誰かが覆い被さった、直後足元に何かが砕け散る音 上に被さってた男は神山の上着を掴み転がるようにしてビルの壁に神山を引っ張った 急いで身を起こす神山 眼の前の路上に上から降ってきたガラスの破片が飛び散っていた あのまま上を見上げていたら砕けて降り注いだガラスの直撃を受けていただろう 良くても大怪我、下手をすれば目をやられていたかもしれない 横を見ると先ほどの上官らしき男がビルの上の方を銃を構えながら覗き見ていた 神山の視線に気づいて目を向ける 「助かったよ、危ないところだった」 男は黙って頷き、立ち上がれというように顎で促す 「このビルの中だ!行くぞ!」 立ち上がった神山の前に出て銃を構えながら壁つたいに進む ビルの入口らしい自動ドアがあった、片手で神山を制止して中を覗き見る 「すりガラスだ、中が見えない」言いながら自動ドアの正面に立ち銃を向ける 神山の方をちらりと見た、頷く神山 腰だめにした小銃を連射してドアガラスを破った ガラスが砕け散ると同時に神山も小銃を構えてビル内に銃口を向けた 誰の姿もない、銃床で残ったガラスを叩き割りビル内に滑り込んだ ※ハチキュウ、89式5.56mm小銃 自衛隊の主力小銃 
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