影法師

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行く手を阻む男は銃を向けられても威嚇射撃にも動じる様子はなかった 銃口を男に向けたままじりじりと後ろに下がる圭 (どうしたらいい?逃げ場は?) 通路を走ってきた時にドアがあつたのを思い出す 後ろにいる愛美とみちるに小声で言う 「後ろにドアない?開いていれば飛び込んで」 すぐに振り返りドアを探す二人 2メートル後方にドアが見えた、みちるがドアまで走りドアノブを回した 後ろでドアノブを回す音、だが鍵がかかっているのだろう開いた音はしない (くそ、だめか) 男は動きそうにない、逆光で顔がよく見えないせいで表情も掴めない 道を塞ぐように立っているだけなのだが視線を外したら危険だと感じる トリガーにかかる指に力が入る 撃ってしまおうかと考えたがたとえ足を狙ったとしても小銃だ、怪我をさせて動けないようにするというわけにもいかない この距離ならば撃てば足でも致命傷になるだろう 大腿部を撃てば弾丸は大きく肉をえぐって動脈を引き千切るだろう、足先を撃てばそこから先は吹き飛ぶ事になる  今までも何度か警察官として銃を人に向けて撃った事はあるが撃ち殺したことはない  拳銃とは違う、、一発で相手を死に至らしめるか肉体を大きく破壊する まだ、相手は襲っても来ないし武器なども手にしていない  警察官としての習性で撃つのを躊躇ってしまう 拳銃に持ち替えようかとも考えたが向けた銃口を外す事に危険を感じる 一瞬だけ後ろを振り返る、駄目だったと言うように首を振るみちるの向こう側にある 階段が目に入った 「そこから一歩でも動けば撃つ」 睨みつけたまま言う 上の階に行けばますます逃げ場がなくなるだろうことはわかりきっているが 二人を連れての強行突破も危険だ どこかに立て籠もり時間を稼いで神山の到着を待とうと決めた 神山が来れば逆に挟み撃ちにもできる 「階段を上に行くよ、離れないでね」小さな声で愛美とみちるに言う 後ろにゆっくりと下がる、銃口は男から外さない 男は動く様子はなくただじっとこちらを見ている 「後ろ、階段です 気をつけて下さい」愛美の声だ 後ろ足で段差を確認して階段を上がる、上がるに連れて男の姿が上半身から徐々に 見えなくなっていく、階段は途中で折り返して二階へと続いている 折返しまで上がると男の足しか見えなくなった、くるりと振り返る 「走って!」 3人は残りの段を駆け上がった  
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