影法師

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「圭!!」 叫びながら横倒しになっているロッカーを飛び越える 給湯室の隅にうずくまるみちると愛美を背に片膝立ちで銃口をこちらに向けている圭 三人の姿を確認すると即座に銃を室内に向ける 手榴弾の爆発で損壊した天井や器物、舞い上がっている埃と白煙で視界が悪い 先ほど怪物に立っていたあたりを見るがそこには姿は確認できなかった 埃と白煙の中人影が現れた 銃口を向けながら目を凝らす 自衛隊員だった 「化け物は吹っ飛んだようだ、怪我はないか?」 それでも周囲を警戒しながら小銃を構えて横歩きで神山の方に歩み寄る 自衛隊員 周囲の警戒を彼に任せて圭の元へ走り寄る神山 「無事か!」 目の前に立つ神山を見上げる圭、 一瞬間を置いて深くため息をつき銃口を下げた 「遅いわよ死ぬかと思ったじゃない、、」力なく言うと後ろを振り返る 「二人とも大丈夫?怪我はない?」 震えながら頷く愛美、「ふぅー」とため息をつくみちるの足も震えていた 圭の指先から滴ってきたであろう血が銃を伝い銃口から滴り落ち床を濡らしていた   「怪我したのか!見せてみろ」気づいて圭の腕に手を伸ばす神山 振り払うように腕を引き立ち上がる圭 「ちょっと切っただけよ大したことないわ」 まわりを見渡し小さなシンクについた引き出しを開ける圭 中に畳んで入れてあったタオルを取り出した 右手に巻いてある布は 血液で真っ赤に染まっている 口でほどきシンクの中に投げ捨てた タオルを握りこむようにして半分巻いた後にその右手を神山に突き出す 「裂いて手首で縛って」  神山は無言で頷きタオルの残りの半分を割いて手首で強く締めた すぐ後ろに小銃の銃口を室内に向けたまま背中をこちらに向けたままの 自衛隊員が言う 「もう1体何かがいたはずだが見たか?」 「いや、見失った」 神山も銃を構えて室内を見渡す 「圭、怪物は2体か?」 「そう、2体、、まるで、、」言葉を探すように間を置くと思い切ったように言った「そう、、鬼みたいなやつと形のよくわからない影のようなやつよ」 「本で見た鬼そのものだったわ、、あれが本物の鬼なの?」 「話は後にしろまだ脅威が去ったわけではない」自衛隊員が言う 「ああわかっている」 答える神山 「さっきは感謝する、危なかった」 「あんたらを守るのが俺の任務だ」徐々に白煙も埃も消えてきていた 「名前を聞いてなかった、あんたの名は?」 「藤沢だ、階級は言えん」答える自衛隊員の男 「藤沢さんか、任務だろうとなんだろうと礼を言う」 藤沢が腰のホルダーから小型の無線機を取り出し何度もスイッチを押す 「くそ、、壊れたか、、」言ってインカムごと床に捨てた 室内は見渡せるほどになっていた 藤沢は室内にゆっくりと足を進める 「無線機が壊れた、、外の状況もわからないし助けも呼べないがここに留まるのは危険だ もう一体のやつも逃げたのか隠れてるのかわからない また襲ってきた場合ここでは逃げ場もない、、移動しよう」 「そうだな」 後ろを振り向き3人の顔を見る 圭がうなずいて愛美、みちると神山の背後につかせて自分が最後尾につく 「離れずに歩きながら周りを警戒しててくれ 何か見つけたらすぐ教えてくれ」 自分の後ろの愛美とみちるに言う 「わかりました」答える二人 「進むぞ」先頭の藤沢がちらりと後ろを見て言う 上下左右と目を走らせながら壁沿いを歩きだした 天井板は半分崩れ事務機器やデスクなど散乱する室内、 動くものは見当たらない 出入口まで半分ほど進んだところで神山は さっきの怪物が立っていたあたりの床を見渡した 「藤沢さんあの化け物は跡形もなく吹き飛んだのか?」 爆死したのなら肉片や血液などの痕跡がありそうだがそれらしいものが見当たらない 「やつの足元で間違いなく爆発した、、普通の生き物なら体はバラバラになるだろうな だが見ての通り痕跡が見当たらない」 「相手は人間の理解を超えた存在だ考えるだけ無駄だ」 藤沢は何か言いかけた神山の言葉を遮るように言った 廊下へと出られるドアの前まで来ると素早くドアの外をみて反対側に立つ藤沢 神山もドアの手前側の壁に沿って立つ 藤沢が目で合図する 二人同時に廊下に飛び出てカバーし合うように銃を構える 静まり返った廊下 何の気配もない 後ろの3人に目配せし廊下に出るように促す神山  「ビル内を移動して正面出入口まで行くよりもビルの外側に設置されているだろう非常階段を使い外へ出た方が安全だろう」 廊下の壁の上部についた緑色の非常口への矢印とマークを見て言う藤沢の言葉にうなずく神山  廊下を進み階段の前まで来ると階段を下りずに非常口の案内に従い左に折れる廊下を曲がる 廊下はまっすぐのびていて右側にドアがいくつか並ぶ、左側は壁だけだ そして廊下の突き当りにワイヤー入りのすりガラスのはまったスチールドア ドアの上に非常口と書かれているのが見えた 「あそこだ、行くぞ」 左側の壁に沿うようにし右のドアを警戒しながら一列に進む 
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