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修練場と書かれた板がかけてある扉を開けると
中で一人の男が木刀を振っている
「剣道ではありませんね・・・剣術ですか・・」
長身で姿勢がよい男、立ち姿からも剣道の有段者であろうと見てとれる
木刀を振っていた男が振り返った
入り口に立つその長身の男を見て敬礼をした
「貴方が新しく来た人ですか」
「はい、本日付けで刑事課に転属してきました神山です、
署長が不在と聞いたので、戻られるまで木刀振ってました、
申し訳ありません」
「いえいえ、構いませんよ」
「署長の香坂です、神山くんは優秀な刑事と聞いています
よろしくお願いしますね」
後ろで手を組み近づく・・
「剣術ですか・・・貴方は確か剣道の有段者でしたよね、剣術も
やっているのですか」
「剣術の方は最近始めたばかりですが」
「そうですか・・今度手合わせでもお願いしようかな」
「署長も剣道は相当な腕前と伺っています」
「自ら、異動の願いを出してここに来たと聞いています
何かを追ってきたのですか?」
物静かで物腰も柔らかいが眼の奥に鋭い光を感じる
返答に詰まる神山
「ま、いいでしょう またゆっくり聞かせていただきましょう」
「では、私は会議があるのでこれで」
「着任の挨拶はこれでいいですよ」
くるりと振り返り歩いて行く
「はっ、失礼します!」
修練場から出て行く署長の香坂の後ろ姿に敬礼をした
香坂政義、キャリア組で神山より一回り以上歳は下だが
キャリア組特有のエリート風を吹かした雰囲気とはまた違った
ものを感じる 初対面でいきなり《何を追って・・》と聞かれ
言葉に詰まった神山、見透かされたような眼光に底が知れぬ
ものを感じた
「ふぅ~、焦ったな でも只者じゃねーな、あの署長・・」
木刀を壁にかけて汗を拭い神山も修練場をあとにした・・
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