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桐の木箱・・・芦屋酒造で同じものを見た、山から持ち帰った
巻物を芦屋が木箱に収めた・・その箱にそっくりだった
その写真を見て確信した、もう一本の巻き物が入っていた箱に
違いないと
挨拶を終えて最後に鑑識係のドアを叩いた
「あんたが神山さんか 松元から聞いてるよ」
そう言って出迎えたのは鑑識課の三宅という課長だった
「外で話さねーか」
小声で三宅が言った
署の二本向こうの通りにある小さな食堂で待ち合わせをした
食堂で待っていると三宅が暖簾をくぐって入ってきた
昼飯時の時間帯も終わり店には神山と三宅しか客はなく
年寄りの夫婦だけで営んでる食堂らしく二人で洗い物をしている
「おばちゃん!おでんもらうよ!」
そう言って、大きな丸い鍋から出ている串を幾つか選び
皿に2つ盛って神山の正面に座った
「壁に耳ありってね・・」
そう言って神山の顔を見た
「ミイラの件だろ?」
すぐに本題を持ち出してきた、単刀直入な性格なのだろう
鑑識の人間はそういった性格の者が多い 回りくどい物言いは
せずズバリと核心を話すのだ 神山はそういった事からも
鑑識の人間と気が合うことが多かった
「三宅さんは松元と似てるね」
笑っていう神山
「よせよ、俺はあんな変わり者じゃないぞ」
おでんを頬張りながら笑う
「さっき現在捜査中の資料を見せられたんだがミイラの件の
資料はなかった・・」
「ああ、あれからな」
そう言ってその後の経過を話してくれた
本人には家族もなく現住所のアパートには住民票を置いているだけで
住んでるのは別人で、全く関係のない人間だった 結局、生きている
姿を見ている者を確認できなかった
窃盗での前科もあったため
状況から見て、表社会の人間ではないだろうと判断された
免許証については、何らかの方法で本人になりすました誰かが
更新手続きをしたんだろうと矛盾した理由で捜査は打ち切りと
なっていた
「資料も全て無いよ、上に上がったまま帰ってこない
ミイラも科捜研に行ったきりだ」
「誰かが隠しちまったんだろうな、下手に興味持つのは危険だな
あんたならわかるだろ」
思いついたような表情で神山を見た
「まさか・・あんた、それを追ってきたのか?」
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