お姉ちゃん

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「これはこうすると解けるでしょ」 「あ、本当だ」 「じゃあ、こっちの問題もやってみようか」 「え、分かんないよ」 「大丈夫、こっちの問題の解き方を応用すれば出来るよ」 悠太が苦手な算数の解き方を、双子の姉の悠莉に教えて貰っている。 その時悠太達の部屋のドアがノックされ、ドアの外から母親の声が聞こえて来た。 「お風呂沸いたから入っちゃいなさい」 「ウン、もう少しやったら入る」 母親が階段を降りていく音を聞きながら、悠太はお姉ちゃんに声をかける。 「一緒に入ろうよ?」 「ウン、でもこの問題を解いてからね」 「分かってる」 悠太は悠莉にヒントを貰いながらなんとか解く。 悠太は勉強に使用していた教科書とノートを引き出しの中に仕舞い、お姉ちゃんと一緒に階下に降りた。 階段を降りて直ぐ脇にある居間のドアを開け、母親に声をかける。 「お風呂入っちゃうね」 「チョット待って、着替えの下着持って行って」 母親が洗濯済みの服の山の中から、悠太の下着を探す。 母親が悠太の下着を探している間、悠太は父親の方を見る。 父親は居間の隣にある座敷に置いてある仏壇に、手を合わせていた。 仏壇の脇には悠太達の祖父母の遺影とエコー写真が置かれてある。 母親は悠太の下着を見つけ出し手渡した。 居間を出て風呂場に向かう悠太の耳に、母親が父親に愚痴をこぼすのが聞こえる。 「悠太たら、勉強しながら独り言を言っているのよ」 「変な癖があっても、勉強しているだけ良いじゃないか」 「それはそうなのだけど…………」 悠太の苦手な科目が全く無い完璧な双子の姉、悠莉の欠点は、生まれた時から悠太にしか認識されていない事であった。
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