第1章

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浮上した気持ちが一気に下降していった。 「いつ転校するのですか?」 「今日が最後みたいよ。書類を提出したら帰るって言ってたから。もうそろそろ帰る筈よ。 そうだ、高村くんに駅まで送って貰う?」 「いえ、いいです。一人で帰れます。」 「そう?まだ熱が上がるかもよ。倒れたらどうするの?一度倒れてるし…」 「大丈夫です。」 家で寝ていた時より体は軽い。きっと一人で大丈夫だ。 高村くんに甘えたら彼に迷惑をかけてしまう。 「そう?心配だけどな… じゃあ鞄を持ってくるわ。浅井さんは寝ていてね。」 「はい、お願いします。」 布団に横になるのを見届けて先生は保健室から出ていった。 時計を見ると一時間目はとっくに始まっていた。 こんなに早く帰るなら今日は休めばよかった。 いやそうしたら高村くんにはもう会えなかったんだ。最後に遠くからでもいいからもう一度彼に会いたい。 気を失ってる時に会ったって仕方ない。 彼の姿をしっかり脳裏に焼き付けたい。 帰りに高村くんのマンションに行ってみよう。もしかしたら会えるかもしれない。僅かな望みを抱きながら先生を待っていた。
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