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ヘースケの部屋の扉を閉めた俺は、その扉を背に座り込んだ。
……あー……何やってんだ、俺……。
やってしまった。
友人に、親友に――好きな人に。
キス、してしまった。
今更になって恥ずかしくて顔の半分を手の平で覆う。
ヘースケの顏が思い出される。
突然引き寄せたから目ぇ真ん丸で、すごく近くて――感触とか、覚えてない。
と、唇が少し痛んだ。指でなぞると少しだけ血がつく。
……ぶつかったもんな……。
「あー……くそったれ……っ」
頭を抱え込んで俺はしばらくそこから動く事が出来なかった。
――――
――ってわけにもいかないので数分後、ヘースケのマンションを後にした俺は、ふらふら、と街を歩いていた。
気づけばもう辺りは暗い。
家に帰る気もしない。
音がある街――独りになりたくないな、と思っていた。
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