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「……何かあった顔してますねぇ」
ん?
楠木さんが俺を見て、にやっ、と笑った。
こんな人だったっけ、と少し驚く。
まぁあの時はそれどころじゃなかったので初めてに近い。
楠木さんは俺と同じように目が悪いのか眼鏡をしていて、同じくらいの身長。
多分いくつか年上。
あと、じっ、と見てくる切れ長の目が――卑しく見えた。
「まぁ、色々――」
「――三咲さんと、ですね」
勘は当たっていたようだ。
鋭い、と言ってもいい。
「どうです? これから一杯やる予定なんですけど」
よければですけど、と八重歯を見せて笑う楠木さんに俺は少しため息をついて、乗った。
一人でいたくなかったところだし。
なんて、言い訳はよそう。
ただ単に興味が沸いた。
「いいっすよ。あと、楠木さんって下の名前なんですか?」
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