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俺も下の名前で呼び出していた。
「でもまぁ……そう見えてる方が楽っちゃ楽ですけどねー」
トールさんはお猪口に最後の酒を注いでくれた。
……俺も酔ってるかも。
自分から笑うのはそうでもしないと耐えられないから。
引かれるのが、怖い。
「――楽でもそれじゃ楽しくない」
「は?」
と、トールさんは自分のお猪口を俺のお猪口にかちゃん、と小さな乾杯をした。
「本当は一途なくせして」
ぐぬ。
そうだ、俺は学生の時からずっとヘースケを好きだった。
そりゃ何人かと遊んだりしたけど、それは本気じゃない。
むしろ浮気――今みたいに寂しくて。
「いい事です。逆に俺はユーキさんみたいに誰かを一所懸命に愛した事はない」
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