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口につけたばかりの酒を吹くところだった。
なんつったの、この人! 愛? はぁ?
「酔っ払いの戯言だと思ってんならそれでいいですけどぉ」
トールさんは八重歯を見せて無邪気に笑う。
「ま、羨ましいですよ、本当に」
そう言って、くいっ、と最後の酒を喉に通した。
……失恋、してんだけどなー。
っていうか、何だろ……照れ臭ぇ。
「ユーキさんも大分酔ってるみたいですねぇ。顔が真っ赤だ」
あーくそ、わかって言ってんだろ。
俺は眼鏡のつるをなぞりながら、まだいけますけど、と強く返す。
嘘の強がりを返した。
トールさんは俺よりも三つ年上。
たかが三つ。
いい大人のからかいなんてマジに取ったりしない。
けど――。
なんか、悔しーじゃん?
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