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少し骨ばった鎖骨に顎が当たって痛い。酒臭いし煙草臭いし――温くて。
俺は、泣いていた。
ほんの少しだけ。
見られたくなくて、そうしていた。
きっとトールさんはこのために部屋に誘ったのだと思う。
呑んでいる時、俺はそんな顔を見せてしまっていたのだろうか。
それとも、見透かされたのか。
「……むかつくなぁ、あんた」
「いやぁ、よく言われます」
「ふっ、何だそれ」
「ほんとですよぉ? だって――」
もぞっ、とトールさんは足を動かして、膝を立てる。
起き上がりたいのか、と少し頭をあげると頬を掴んできた。
眼鏡と眼鏡が、かちっ、とぶつかって。
「――俺、ずるいですから。よっ、と――」
ん? お、え、は?
首に、肩に手を回されたと思ったら、ごろん、と逆になった。
俺とトールさんが上下逆になったのである。
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