ー 君からキスしてくれるのを待ってた ー

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ーーねぇ、私の方が高いよ、 と笑いながら、ベンチに座っている彼の前に立ってみた。なに言ってんの?子供みたい、と笑う彼。思った通りの反応すぎて笑った。 いつもの身長差が 逆だね、こういう目線で見られてるんだね、わざと感嘆してみる。 つられて彼も笑い、 ーーいつも君を見てなに考えてるかわかった? と微笑ったあと、真面目な顔になって私の手首をグッと掴んだ。 離せなくなってしまった目を、 ゆっくり閉じて首を傾け、 ゆっくりと彼の顔に近づけて、 唇を合わせようとした瞬間、 彼が 口角を上げて 私を見つめるだけで、全く動かない事に気付いて 寸前で止めた。 けれどすぐに、止めてしまった事で 余計な恥ずかしさを覚え、頬が紅くなるのを感じた。 負けてしまいそうになる…… 目線をずらして彼の肩を見下ろし、 震えそうになる声を抑えて ーーやっぱり。 出来るだけいつもの調子で言い、悔しいのでこちらもからかい返そうと肩に指を這わせた。 急に彼 がグッと 私の腰を 引き寄せた。バランスを整えようと 無防備になっていた 耳元に ーーなに?恥ずかしくなっちゃった? と囁き私の髪を撫でた。 そのまま手を滑らせて 頬を覆うと、 紅く染まっているはずの 目元の膨らみを 親指で すっと軽く撫で、 おでこをくっつけて いつもの彼の顔で 悪戯っぽく微笑った。 その魅力に誘われて 今度は唇を重ね、 触れるだけの 優しいキスをした。 唇が離れてもまだ近すぎる距離で、 ーー キスってね、恥ずかしいものなんだよ、知らなかったの? 小さい声でいじわるを言う彼。 それを聞きながらもう一度唇を合わせて、知らなかった、と声にならない声を唇に乗せた。 唇を優しく掬いとる味わうようなキスと、 引き寄せられた腰に当てられている手を感じ、抗えない何かに負けそうになって、唇を離した。
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