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本号のテーマはファンタジーである。
近年、日本における自殺者数は年間3万人の水準を前後し、うつ病患者数は100万人を超えるという。一方で、2014年のハロウィンにおける市場規模は1100億円といわれ、東京都市部はコスプレして盛り上がる若者達に埋め尽くされた。アイドル文化の盛況は衰えることなく、今や外資系コンサルティング企業や社会科学者が大真面目にAKB48選抜総選挙について分析する。コミックマーケットの来場者は55万人を超え、ITビジネスの分野では拡張現実に関連する技術の素晴らしさが盛んに謳われている。そして東京には二度目のオリンピックがやって来る。
近年の社会学の知見によると、現実を規定するものは「反現実」だという。人のモノやコトへの欲求は、現実に常に先立つ。自殺者の例に従うならば、現実は人に死をもたらすほど残酷であり、人を動かすモチベーションを発生させる場所でも、未来を支えてくれる場所でもない。では、それでも人が生きていくとするならば、動機はいったい何で、それはどこからやって来るのだろうか?
そのヒントは、現実からほんの少し離れたファンタジーの中にあるのではないか?
今、ファンタジーへの欲求がこの国を覆っている。ファンタジーへの欲求を分析することで、この国の現在の姿が見えてくる。
このような仮定のもと本誌は編集された。
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