1.三歩進んで二歩後退

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早瀬さんはそれに納得を示してくれた。 そしてとうとうこの日紆余曲折を経て、別マ編集部との対面を果たしたわけだ。 だがしかし。 (原作者の代わりにアシスタント連れてくるってわけわかんねぇよな…!) 人一倍鼻がきく真矢さんは、漂う胡散臭さに眉をひそめて、俺と早瀬さんを交互に見た。 「あー…川野先生はちょっと、今体調を崩しておられるので、彼に代わりに来ていただいた、次第、です…」 取り繕うように付け加えたが、誤魔化せた気はしない。 真矢さんが無言でずずいっと早瀬さんに近づいた。 それに早瀬さんは過剰にびくりと肩を揺らし、俺の背中に少し隠れる。そしておそらく無意識だろうが、俺のシャツの裾をつかんだ。 ……ま、まぁ、頼られてる感じは悪くないけどな(嬉) そんなあからさまに怯えきった早瀬さんを、遠慮なく真矢さんが見つめる。 妙な緊張が編集部室に走る。 パチパチと真矢さんは数回瞬いて、口を開いた。 「すっごいイケメン…」 そして、それだけボソッと呟いた。 俺としては若手芸人ばりの華麗なズッコケを披露する羽目になった。…こういう体を張った芸は俺の本分ではないんだがな。 呆然と呟いた真矢さんは、次の瞬間にはハッとした様子で我を取り戻した。
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