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「………ッ」
早瀬さんは金縛りも一瞬で解けたように、ビクリと肩を揺らし。
よろよろと後退したかと思えば。
そのまま無言で、脱兎のごとく扉から出て行った。
…まさに一瞬の出来事であった。
みんなポカーンである。
そんな中なんとか一番に我を取り戻した俺は。
「あ、あのっ、すみません、説明は後でするので…とにかく今は追います…!」
と、それだけ言って早瀬さんを追いかけた。
誰かに引き止められる間も待たず廊下に出るが…
(足はやっ!!)
もうすでに早瀬さんの背中は遠くなっている。足早瀬さんかよ。
全速力だよ。マラソンのラスト50メートルダッシュ並みの速力だよ。何に向かってラストスパートかけてんのあの人!何を終わらす気なのいったい!
「早瀬さん!」
追いかけながら呼びかけるも完全無視である。聞く余裕もないってか。
すれ違う人をものともせず、ひたすら走る早瀬さん。と、それを追う俺。
体力のない俺にはいささか分が悪い…。
(あ、)
「前!早瀬さん前!!」
ばんっ
早瀬さんが角から出てき女性にぶつかった。幸い少しかすっただけに済んだらしく、両者少しふらついただけだ。
俺もその間に早瀬さんに追いつくことに成功する。
「だ、大丈夫ですか?」
女の人が尋ねる。ここはBeauty Lady編集部…通称BL編集部前(※お察しください)、ということはそこの編集者の人だろう。
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