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彼女は早瀬さんの顔を見て、じんわりと頬を染めた。…あーハイハイ、稀に見るイケメンですよねこの人ね。条件反射でそうなっちゃうのは俺もよくわかります。
俺が息を整えながら、こちらこそすみません、と謝ろうとした時。
「っ、あ…う、すまないっ」
先に早瀬さんがかろうじてそう言って、女の人の横をすり抜けた。
ってえええ…また全力疾走かよ!勘弁してよ~!
「あ、えっと、ウチの者が失礼しました!」
俺もなんとかそれだけ彼女に伝えて、同様に横をすり抜ける。彼女はぽかんとしていたけれど、今は気にしていられなかった。
角を曲がれば、彼の姿はすでになかった。
相変わらず足が速い。つかどこ行った!?
「はやせさーん?」
非常階段への扉を開けて、覗き込むと。
「あ」
いた。
階段の踊り場で顔を伏せってポツンと座っている黒髪イケメンを発見した。
俺は一つ息をついて、少し間を空けそっと彼の隣に腰を下ろした。
「早瀬さん足速いですね。追いかけるの大変でしたよ」
「……」
「僕もう体力落ちに落ちちゃって。やっぱなんか運動始めようかなぁ」
「……」
まるで無反応だがそんなことをいちいち気にしていてはこの人の相手は務まらない。
「…ほんと、俺に追いかけさせんの好きですよねあんた」
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