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えらいえらい、という意味を込めてもう一度頭に手を伸ばしてそっと撫ぜた。早瀬さんは抵抗しない。
「あとで真矢さんにも謝りましょうね」
俺も一緒に謝りますからーそう言えば、早瀬さんがちらりと遠慮がちにこちらを見上げてくる。
な、なんだろう。少し身構えてしまう。
……しかしこの人はホントにこういう表情がいちいち絵になるというかなんというか、長い睫毛の下から黒い瞳で見上げられるその憂いのある風情がなんとも……っていやいや別に見惚れてるとかじゃないけども。
「…お前は本当にばかだな」
「この流れでなぜ罵倒!?」
イケメン野郎に目を奪われつつも、俺の耳はなんとか彼の言葉を拾った。…いや、だから見惚れてたとかじゃないって。
早瀬さんはまた前に向き直って、俺から目を逸らした。そして小さな声で呟く。
「……ばかみたいに、優しすぎる」
ちょっと拗ねたみたいな口調。
だけどそこに、ほんの少し照れと嬉しさみたいなのがまぎれてる。
…俺も自分で毎度毎度チョロすぎるとは思ってるんだけど、この人のこういうところがどうしょうも、どうしようもなく…。
「…別に、そんなこともないですよ…」
俺も視線を逸らして、極力彼の方を見ないようにしながらそう言った。早瀬さんが照れているのがわかって、それが伝染してしまった。
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