1.三歩進んで二歩後退

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「本当ですか!?川野先生の!!俺、川野先生の大ファンなんです!!羨ましいなぁ!」 あまりの眩さに俺が某有名大佐のごとく目をやられていると、山本さんが早瀬さんの手をガシッと握り込んだ。 あ。それ、地雷です山本さん。 極限状態まで追いやられていた早瀬さんの精神の均衡が、"見ず知らずの人間に接触される"というアクシデントを受けて、一気に崩壊した。早瀬さんの口から魂的なものが抜けるのを見た気がした。アデュオス。 「もう俺ホントちゃら恋が好きで!初期からずっと読んでるんですけど、良い意味で期待を裏切る展開に惚れこんじゃったというか、いつか絶対映像化実現させてやろうって誓ってたんです!だからもう今回はホント嬉しくって…あ、ていうかアシさんってことはあのトンデモ背景を描いたりもしてらっしゃるんですよね!すっごいなぁ~!」 そんなことには山本さんはまるで気づかずに手をブンブンと振っている。うーん爽やか、だけれども。 そんな様子をはたから見ていた編集長が、パンと景気よく手を叩いた。 「うんうん。親睦も深まったところだし、」 深まったのかこれ。一人トんでますけど。 「これからも皆で協力して盛り上げてこうな。期待してるぞ」 はいっ!と山本さんがキラキラと返事をするのにならって、 「…はい」 と、俺も返事を返した。 …早瀬さん、助けてあげられなくてごめんなさい。
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