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その時、俺の会社用の携帯が鳴った。
ちなみに着信音はカノンに変えさせてもらっている。…別にエンダアァァがトラウマになっているわけではないぞ、断じて。
表示されている相手方の名前を見て、無意識にため息が出た。
「あ、すみません」
「いいですよ、出てください」
山本さんの純度の高い爽やかスマイルに促され、俺は(しぶしぶ)電話に出た。
その間も早瀬さんは不安げな顔でこちらを見つめていた。それにまた気分が少し良くなるが、悦に入っている場合でもないので視線をそらし電話に応対する。
「はい、相良です。…はい、はい……………わかりました。すぐ行きます」
俺がそう言い終わらないうちに、電話の相手は通話を切った。それにまたため息が出る。
別の担当作家様からの呼び出しだ。ここ最近かなり頻回していて、仕事とはいえイヤにもなる。
「作家さんの呼び出しですか?」
爽やかに苦笑しつつ山本さんが問うた。
俺はそれに頷きながら、早瀬さんの方を見やる。と、彼はもうSEKAI NO OWARIみたいな絶望的な顔をして俺を見ていた。
う、うん、そんな顔されてもね、仕方ないのよ仕方ないドラゲナイ。
「…すみません、ちょっと行ってきますんで、席を外します」
早瀬さんの目が見開かれて、"この俺をこいつと二人残していくのか…?"と、盛大に訴えていたが、それには気づかないふりをしていそいそと俺は部屋を出た。
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