2.初めてのことはわりとなんだってキツイ

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そう、落ち着いたらいつもこのざま。これはこれで対応に困るが、ここまで来たら持ち直すまであと一歩だ。根気よく付き合わねば。 「そんなことないですって。先生はいつも期限までに素晴らしいものを完成させてくださるじゃないですか。今回も大丈夫ですよ」 「うっ、そ、そうかしら…」 「はい。それにまだ他の作家さんだって書き上げてる時期じゃないですから」 「それって、相良さんのもう一人の担当作家さんのこと?」 「ええ、まあ。か…彼女なんかはわりといつもギリギリですよ」 こんなところで引き合いに出してすみません、"川野先生"。 「川野先生の作品も映像化決まったんですってね」 「ご存知だったんですか」 「そりゃね。私、前々から彼女のこと注目してましたもの」 そう言う香久耶先生は、既にもうプロの顔だ。 「あの画力…並大抵のもんじゃないわ。背景とか正気の沙汰じゃない…アシスタントさんにも化け物がいるのかも」 ああ…まぁある意味モンスターですけれども。 「でも彼女、絶対表には出て来ないそうじゃないですか。話し合いって作家抜きでできるものなんですか?」 「あ、ちょうどそのアシスタントの方が、川野先生の代わりにって来てるんですよ」 アシスタントっていうか本当は川野先生本人だけど。ここまで来たらもう嘘は突き通すに限る。
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