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がっくしとうな垂れるようなポーズを取る編集長に、それが演技だとわかってはいても…俺はもうこう返すしかなかった。
「…わかりました。資料に、目を通しておきます…」
「あ、そう?じゃあハイこれな。頼んだよ☆」
「……」
そしてこの変わり身の早さだ。その言葉尻に星つける感じやめろください。アンタいくつだよ。…とは、口が裂けても言えないけど。
「あ。あとさぁ」
肩を落として立ち去ろうとした俺に、さらに編集長の声がかかる。
「ちゃら恋の映像化の話なんだけどね。うちのプロデューサーが直接話したいって言ってるから、今度紹介するよ」
「はい。わかりました」
プロデューサーというのは正英社が抱える映像化に特化したプロダクションの人のことだ。制作会社との交渉や、権利の管理なんかもしている。
数ヶ月前、その…なんだ、まぁプライベート、ってやつで色々あって、俺が先方である制作会社に対してちょっとへまをやらかした時も、彼らがフォローしてくれたと聞いている。
一度会ってきちんとお礼をしたい。
そう思ってすんなり返事をしたところに、編集長がこう付け足した。
「川野先生とも会いたいそうだ」
「………………え?」
…たっぷり30秒は尺を取ったんじゃなかろうか。
「今度連れてきてくれ。あ、予定では一週間後だから」
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