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……
並木道を歩くこと数分。
たどり着いた会社のエントランスをくぐり、廊下をまっすぐ進む。
人にすれちがう度に軽く会釈をすれば、何度も振り返ってこちらを見てくる視線をビシビシと感じる。
無駄に注目を集めてしまっているが…俺はそんなの気にしなーい。周りの目なんて目じゃなーい。yeah…(ラップ風)
俺はラッパーのごとく強気な姿勢のままエレベーターへと乗り込んだ。と、途端にすでに乗っていた数人が、ざわ…ざわ…とカイジし始める。それも徹底的に無視して、気づかないふりを決め込んだ。
目的の階について、エレベーターから下りる。
扉が閉まる瞬間、ついに背後で黄色めいた声が聞こえた気がしたが、それも扉が閉まってしまえば聞こえなくなった。
うん。何事もない。いつも通りだ。
ここで俺が動揺したそぶりを見せるわけにはいかない。要らない不安を抱かせかねない。平常心平常心。
(…よし)
別マ編集部の扉の前で、俺は気合いを入れ直した。
スゥーっと息を吸って、戸を開けようとした時。
『ーでも、あの二人はどうなったのかしらね』
『カホと竜太、ようやくくっつきましたもんね!僕もう感動しちゃって!』
『…きも』
『ええ!?なんで!?』
中からそんな話し声が聞こえてきた。戸を開けようとした手を止めて、耳をそばだてた。
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