1.三歩進んで二歩後退

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…… 並木道を歩くこと数分。 たどり着いた会社のエントランスをくぐり、廊下をまっすぐ進む。 人にすれちがう度に軽く会釈をすれば、何度も振り返ってこちらを見てくる視線をビシビシと感じる。 無駄に注目を集めてしまっているが…俺はそんなの気にしなーい。周りの目なんて目じゃなーい。yeah…(ラップ風) 俺はラッパーのごとく強気な姿勢のままエレベーターへと乗り込んだ。と、途端にすでに乗っていた数人が、ざわ…ざわ…とカイジし始める。それも徹底的に無視して、気づかないふりを決め込んだ。 目的の階について、エレベーターから下りる。 扉が閉まる瞬間、ついに背後で黄色めいた声が聞こえた気がしたが、それも扉が閉まってしまえば聞こえなくなった。 うん。何事もない。いつも通りだ。 ここで俺が動揺したそぶりを見せるわけにはいかない。要らない不安を抱かせかねない。平常心平常心。 (…よし) 別マ編集部の扉の前で、俺は気合いを入れ直した。 スゥーっと息を吸って、戸を開けようとした時。 『ーでも、あの二人はどうなったのかしらね』 『カホと竜太、ようやくくっつきましたもんね!僕もう感動しちゃって!』 『…きも』 『ええ!?なんで!?』 中からそんな話し声が聞こえてきた。戸を開けようとした手を止めて、耳をそばだてた。
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