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そんな彼らに向かって俺は、引きつっていてきもいと定評のある営業スマイルを浮かべた。
「皆さん何やら楽しそうですね。いったいなんのお話ですか?」
と、わざとらしくそう聞けば。
「ん?ああ。実は俺もよくわからないんだ!はははっ!」
「あ、あああの、そんな、別に、相良先輩がいつまでも告白もできないヘタレなんて話は、全然!一切してませんよ!」
藤堂が勝手にボロを出して、本田さんはバカを丸出しにした。あなた方にはもう少し色々と隠しておいて欲しいものだ。
ちなみに栗原はいつも通りの無表情で、もはやこちらを見てもいない。
…どっちもどっちか。
「相良、あんた今日ちょっと遅かったじゃない?なんかあったの?」
そして真矢さんは何事もなかったように話題をさらりと変えた。それに藤堂がホッと息をついたのを尻目に、俺は答える。
「実は、今日皆さんにご紹介したい方がいるんです」
そう告げれば、編集部一同がわずかにどよめいた。その反応に内心少しにんまりとしつつ、俺は部屋の外に呼びかける。
「さぁ、どうぞ入ってきてください!」
……シーン。
「…どーぞ!」
…………シーン。
ゆうに40秒は数えられる程の沈黙。
40秒といえば充分ナイフとランプをカバンに詰め込んで、支度のできる時間である。俺がドーラだったらもう置いて行ってるぞ。
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