13人が本棚に入れています
本棚に追加
なにせ、プロの写真家であるこの男は、
一年の大半を海外での撮影生活に充てている。
そしてそのせいで、この国に自分の家と呼べるものを持っていない。
もちろん彼にも実家はあるが、
なぜか仕事の拠点を海外に向けてからというもの
短い帰国の時は、友人の家に厄介になることに決めているらしい。
しかし――。
「無理だ」
言下に断った忍に、「なんでぇ?」と賢悟は髭面の頬を膨らませた。
「だってこの上、まだ何もないし」
忍は、くいっと立てた親指を天井に向ける。
最初のコメントを投稿しよう!