第3章  第一難は平等に

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なにせ、プロの写真家であるこの男は、 一年の大半を海外での撮影生活に充てている。 そしてそのせいで、この国に自分の家と呼べるものを持っていない。 もちろん彼にも実家はあるが、 なぜか仕事の拠点を海外に向けてからというもの 短い帰国の時は、友人の家に厄介になることに決めているらしい。 しかし――。 「無理だ」 言下に断った忍に、「なんでぇ?」と賢悟は髭面の頬を膨らませた。 「だってこの上、まだ何もないし」 忍は、くいっと立てた親指を天井に向ける。
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