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しかし、思わず頭を抱え込みそうになる忍の事情など賢悟は知る由もなく、
やはり屈託なく「なぁ、頼むよ」と繰り返す。
「今度はさ、ひと月くらいって短いしさ。
それに、雅也ん所は、ちょっと長くは居られなくなっちゃっだろ?」
だからお前しかいなくてさ、と哀れな声を出す。
しかし忍は、出かかった溜息を飲み込むと、
それでも「とにかく」と目の前の大きな男に言った。
「今回は、こっちもあっちも無理だから、俺の所もだめだ。
だからどこか他を当たるか、ホテルにでも行け」
しかし、きっぱりと断ったにも関わらず、
目の前の髭面には懐っこい笑みが広がる。
「それなら大丈夫。
俺、寝袋あるし、何もない所で寝るの慣れっこだから。
それにさ、どうせ明日、越してくるんだろ?
だったら俺、こっちに居れば動かなくていいじゃん」
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