第3章  第一難は平等に

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しかし、さすがにホッとひと息ついた時だったせいだろう。 忍は、この時、探し求めてきたかつての愛しい恋人の目が、 遠く自分を見ていることに全く気付いてもいなかった。 さて、と――。 だから、胸の内で独り言を呟き、何の懸念もなく忍は 荷解きと片づけが待っている部屋へと引き返して行った。 ところが、新たな城に戻ってみると、 キッチンを陣取った賢悟が、早くもセッセと片付けを始めていた。 「なんだ、随分と殊勝なことしてるじゃないか」 「当たり前だ。俺は、恩には厚く報いる男だからな」 細い鼻歌と共に、いそいそと食器類を取り出す旧友の姿に クスッとほろ苦い微笑みが忍の口元から零れでる。
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