第2章  那々(続き)

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蝉の大合唱こそ姿を消したが、 こんな大都会の中でも、ツクツクホーシの元気な声は 耳から暑さを倍増させる。 だが、来週末には彼岸があける。 もうちょっとの辛抱か。 日傘がどれほど役に立っているのかと思うほどの日差しに、 そんな淡い期待にも縋りたくなる。 ところが、駅前のスーパーからの帰り道、 昨夜、ちょっぴり衝撃的なシーンに足を止めた場所に来たところで 再び那々の足がにわかに止まった。 だが、もちろん昼日中のこの時刻。 さすがに、男同士のラブシーンが展開しているわけではなく、 目の前には、大きなトラックが二台止まった 大掛かりな引越し作業の真っ最中。
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