第3章  第一難は平等に

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しかし、オフィスの中で、近づく嵐を話題にする者は一人もいなかった。 それどころか、活気というよりも、ちょっとギラついた慌しさを伴って 誰の目も、新商品プロジェクトに突き進み始めている。 だが有難いことに、そんな時にも彼女の上司は、 仕事でギラついたことはない。 「実は今日さ、目的は顔合わせだけど、 アイツには、最初の宿題を出そうと思っててね」 朝のメールチェックなどを終えた頃、 背後から、のんびりと立花が話しかけてくる。 もちろん話題は、超売れっ子というデザイナーであることは言うまでもない。 「で、中谷さんは、何がいいと思う? 『タラシの匂い』のイメージカラー? それともイメージキャラかな? いや、もっと他に何かあるかなぁ」 どうやら余程に「タラシの匂い」が、お気に召したらしい。
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