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「へえ。確か、あそこの最上階って、
ワンフロア全部が一世帯住居なんですよね」
那々は、ハナさんの小さな勘違いに淡く苦笑をしつつも話を返す。
しかし、自分のミスに気付かぬハナさんは、「そうですって」と半ば感心、
半ば呆れた声になる。
「どれだけ広いのかしらねぇ」
「まぁ、しがないOLには想像もつかないくらい、ってことは確かですね。
なにせ、あの荷物の量ですもん」
本当に、暑いのにご苦労様よねぇ。
しかし、言いかけたハナさんがふと言葉を切り、「あっ」と小さく声を呑む。
そして、「ほら」と言ったハナさんの骨ばった手が、
那々の腕にちょっと触れた。
「あの人。あの人が、一人で住むんですってよ」
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