第2章  那々(続き)

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「へえ。確か、あそこの最上階って、 ワンフロア全部が一世帯住居なんですよね」 那々は、ハナさんの小さな勘違いに淡く苦笑をしつつも話を返す。 しかし、自分のミスに気付かぬハナさんは、「そうですって」と半ば感心、 半ば呆れた声になる。 「どれだけ広いのかしらねぇ」 「まぁ、しがないOLには想像もつかないくらい、ってことは確かですね。 なにせ、あの荷物の量ですもん」 本当に、暑いのにご苦労様よねぇ。 しかし、言いかけたハナさんがふと言葉を切り、「あっ」と小さく声を呑む。 そして、「ほら」と言ったハナさんの骨ばった手が、 那々の腕にちょっと触れた。 「あの人。あの人が、一人で住むんですってよ」
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