第3章  第一難は平等に

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第3章  第一難は平等に

引越しを明日に控えた暗い部屋で、 忍は、ひっそりと隣の古いアパートの窓を見下ろしていた。 まだ、荷物の一つもないガランとした部屋は、 遠い故郷で過した空間を彼に思い起こさせ、気持ちが落ち着く。 そして、見下ろす先には、まだ帰らぬ主を待つ部屋が 暗がりの中に、ひっそりと浮かぶ。 セリーシャ……。 切なさと愛しさをない交ぜにし、忍は小さく呟いた。 しかし間もなく、新たな城となる部屋を後に、 マンションの豪華な正面玄関を出た途端のことだった。
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