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どんなに短い打合せの時も、すれ違いや勘違いを防ぐために必ず録音をする。
この習慣が、この時ほどありがたいと思えたことはなかった。
だが、それを再生した途端、
彼女の声が彼の鼓膜を震わせ、再びドキリと胸の奥が跳ねた。
お蔭で、自然と眉間に力が入っていたらしい。
「ひと息入れてください」
マスターの深みのある声をかけられ、鼻先を香ばしい香りがかすめて
目の前に見慣れたコーヒーカップが置かれる。
上品な香りを漂わせ、ブルーマウンテンがカップの中で小さく揺れていた。
「あぁ、ありがとうございます」
淡く苦笑を返した忍の目に、マスターの微笑む顔が映った。
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